三大運動の中の残り2つ「レジスタンス運動(筋力トレーニング)]、「柔軟運動」をみていきます。
最近何かと話題の筋肉トレーニングですが、健康寿命を延ばすにはなくてはならないのが骨と腱と筋肉です。
★脂肪が減っても、筋肉がなければ長生きはできない
健康長寿には、筋肉が深く関わっていることが分かってきました。
筋肉量は、20歳ごろを過ぎると少しづつ減っていき、普通の生活をしていると、70歳代では20歳代の約半分ほどになります。
加齢や生活習慣などの影響によって、筋肉が急激に減少する状態をサルコペニアといいます。
75~84歳の高齢者の10年後の生存率を調べた研究で、筋肉量の多いほど長生きできることが分かってきました。
これは、筋肉量が少ないと感染症に罹りやすくなったり、動脈硬化が進行して心筋梗塞や脳卒中などの発症リスクが上がることを意味しています。
★筋力トレーニングの目的=筋肉を太くすることだけではない
筋肉には、体を支え、動かす役割を担う「骨格筋」、血液や尿を運んだり、胃腸を動かす「平滑筋」、心臓の壁をつくる「心筋」があります。
3つの筋肉のなかで、レジスタンス運動(筋力トレーニング)によって鍛えることができるのは、骨格筋です。
筋肉を動かす神経の働きを改善し、動きをよくするのも、重要な目的です。
★血圧が高い人は、強くいきむ運動は行わない
高血圧のある人や、過去に心筋梗塞や脳卒中を起こしたことがある人は、強すぎるレジスタンス運動を行ってはいけません。
また、健康な人も、呼吸を止めて行うと血圧が上がりやすいので、呼吸を止めないように意識しましょう。
★太もも、おなか、上腕の筋力低下はQOLの低下に直結
太ももの筋肉は、健康長寿を考えるうえで、最も重要な筋肉といえます。
太ももの筋肉を鍛えるには、スクワット運動が有効です。
スクワット運動と合わせて重要なのが、腹筋運動です。
この運動で鍛えられるのは、「腹直筋」と「腸腰筋」というお腹の深部にあるインナーマッスルです。
腹筋を鍛えることで、将来の寝たきりを防ぐことが出来ます。
大胸筋や上腕三頭筋といった胸や上腕の筋肉を鍛える腕立て伏せ運動も、是非行って欲しい運動です。
★自分が”ややきつい”と感じるまで行う
レジスタンス運動(筋力トレーニング)は、正しいフォームで”ややきつい”と感じるまで行います。
”ややきつい”と感じる程度の負荷をかけることで、筋肉は増えます。
これを「過負荷(オーバーロード)の原則」といいます。
★運動強度を測る3つの軸
①生理的運動強度➡安静にしているときの何倍のエネルギーを使っているかという生理的なバロメーター。
②主観的運動強度➡運動する本人が感じる”きつさ”や”楽しさ”を指標とし、人によって異なる。
③物理的運動強度➡歩く速さや持ち上げるダンベルの重さなど、数字で正確に表すことが出来る指標。
★筋肉を効率的に増やすスロートレーニング
ゆっくり運動して筋肉の緊張を保つことで、筋肉内の血流が制限されて、重い負荷をかけて運動したのと同じ状態になります。
そのため、軽い負荷でも高い効果を得られるのです。
血圧が上がりにくいため、高齢者にも適しています。
★ストレッチ=じっくり伸ばす運動だけではない
多くの人が想像しているストレッチを、静的ストレッチといいます。
ラジオ体操に代表されるのが、動的ストレッチです。
★静的ストレッチは、副交感神経を活発にする唯一の運動
副交感神経が働くと、血管が柔らかくなり、広がります。
ストレッチによって、動脈硬化の予防や血圧を下げる効果が期待出来ます。
大切なポイントは、”気持ち良い”と感じる強さで行うことです。
ストレッチは、30秒間以上の時間をかけてゆっくりと伸ばすことで、十分な効果を得ることができます。
呼吸は止めずに、ふだんよりもゆっくりと深くするように意識します。
★ストレッチの特徴
①静的ストレッチ(柔軟体操など)
➡心身をリラックスさせるので、運動後や就寝前にお勧め
➡副交感神経活動が活性化
②動的ストレッチ(ラジオ体操など)
➡瞬発力が出やすくなるので、運動前や起床後にお勧め
➡交感神経活動が活性化
★三大運動を組み合わせることでさらに効果が高まる
有酸素運動、レジスタンス運動(筋力トレーニング)、ストレッチの三大運動は、組み合わせで行うことで、より効果が高くなったり、お互いの欠点を補うことができます。
三大運動をバランスよく取り入れた複合トレーニングが、ヨガや太極拳です。
これらの運動は、1つの運動で三大運動を兼ねることが出来ます。
★高齢者の転倒は、大きな死亡リスクになる
高齢になると、つまづいた時の”とっさの一歩”が遅れることも、転倒の原因のひとつです。
転倒はケガや骨折などの原因になり、高齢者の場合には、そのまま寝たきりになるリスクもあります。
ヨガや太極拳は、姿勢を保つための筋力を高めたり、バランス感覚の低下を予防する効果も期待できます。
以上で、第4章 身体活動・運動と健康の後半を終了致します。
日本健康マスター検定の公式テキスト NHK出版より要点を抜粋して記載しております。