ストレスの問題は、加齢と共に深刻になっていきます。
若い時分には何事も感じていなかった方でも、加齢と共に発散や解消する事が難しくなって来て、結果的には精神疾患やうつなどに悩まされている方は次第に増加傾向です。
★ストレスはゼロでも過剰でも不調の原因になる
”ストレス=体に悪いもの”と思われがちですが、実は適度なストレスは心身にとって必要不可欠なものです。
適度なストレスは、自らを奮い立たせる活力となります。
しかし、過度なストレスがたまると、心身に様々な異常が現れてきます。
ストレスの原因は、主に職場や家庭で起こる出来事やトラブルで、米国精神医学会の分類では、急性と持続性に分けられます。
2012年の厚生労働省の調査では、ストレスの原因では、「職場の人間関係」を挙げた人が41%で最も多く、次いで「仕事の質」が33%、「仕事の量」が30%でした。
一方で、心療内科を受診する患者さんでは、仕事の問題と同等の割合で、家族の問題によるストレスを抱えています。
★「心」「体」「行動」の変化があれば要注意
多かれ少なかれ誰しもがストレスを抱えていますが、ストレスをためやすいかどうかには個人差があります。
ストレスと上手に付き合っていくコツは、「自分のストレスに気付くこと」です。
ストレスがたまってきていることにいち早く気付ければ、ストレスを解消するための、適切な対応をとることが出来ます。
ただ、”それなしではいられない”という程度になると、依存症を招くことがありますので、注意が必要です。
★残業が多いと心筋梗塞の発症率が上がる
週の労働時間が60時間以上の長時間労働者は、40時間以下の人よりも急性心筋梗塞の発症率が高いことや、糖尿病のリスクが高まることが指摘されています。
長時間労働による心身への過度なストレスが原因になっていると考えられます。
★筋肉を緩めて心身をリラックスさせる筋施緩法
リラックスとは、ストレスと対極の状態で、心と体の緊張が解けて安らかな状態を指します。
ストレスは、意識しなくても自然にたまってしまうものですが、自動的にリラックスすることはできません。
意識的にリラックスする方法を、身に付けましょう。
「筋弛緩法」は、手や腕などに意図的に力を入れて、その後の脱力を感じる体操です。
”筋肉がリラックスした”という信号を脳に送り、脳の興奮を抑えて心と体をリラックスさせます。
不安症の治療にも取り入れられています。
体操中は、6秒間ほどかけて口から息を吐き、3秒間ほどかけてかけて鼻から息を吸う腹式呼吸を心がけましょう。
★筋弛緩法の一例
①肩の体操
➡両肩に力を入れて肩をすくめる。
➡10秒間ほど経ったら脱力して両肩を落とし、15秒間ほどリラックスする。
➡これを数回繰り返す。
②顔の体操(上半分を動かす)
➡おでこにしわを作るように眉を上げ、約10秒間保つ。
➡力を抜いて約15秒間リラックスする。
➡これを数回繰り返す。
③顔の体操(下半分を動かす)
➡舌を出来るだけ前へ伸ばして、10秒間ほど保つ。
➡脱力して15秒間ほどリラックスする。
➡これを数回繰り返す。
★自律神経をコントロールする自律訓練法
心身の状態は、自律神経と深く関係しています。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、ストレスを感じているときは、交感神経の活動が活発になって、心が興奮したり、心拍数や血圧が上がってしまいます。
そこで、心を落ち着かせて、心拍数や血圧を安定させる副交感神経を働かせて自律神経のバランスを整えると、心身がリラックスします。これが、「自律訓練法」です。
★認知行動療法で物事のとらえ方を少しづつ変えていく
ふだんとは違うとらえ方を探るトレーニングを「認知行動療法」といいます。
間違った考え方を修正するのではなく、自分の考え方を分析して、その偏りに気付くことが目的です。
偏ったものの見方は、うつ病の発症につながることもあります。
認知行動療法は、うつ病の予防や治療としても取り入れられています。
★自己主張のトレーニングや瞑想もストレス解消に有効
ストレスの原因を調査すると、必ず1位になるのが対人関係です。
対人関係を円滑に運ぶためには、相手を傷つけずに自分の思っていることを伝え、理解し合うことが必要です。
それを実現するためには、「自己主張のトレーニング(アサーション)」が効果的です。
また、一度失敗すると「明日も失敗するかもしれない」などと思い込み、ストレスを感じることがあります。
このように、頭で考えた世界と現実を取り間違えてしまうことがストレスの原因となるのです。
そこで、気持ちを今に向けて、「現実をありのままに知覚する状態(マインドフルネス)」を目指すトレーニングも有効です。
ストレス解消にも効果的なヨガや瞑想は、この状態をつくり、心身をリラックスさせることが目標のひとつです。
以上で、第5章 睡眠と心の健康 前半部分を終了します。
日本健康マスター検定の公式テキスト NHK出版より要点を抜粋して記載しております。