便利な世の中になって、高度な文明を持ったが故の病気が「心の病気」です。
情報が氾濫して、様々な知識を駆使して生活して行く現在の日本では、脳内知識は膨大に蓄積されても心は昔のままなのかもしれません。
高度文明の進化のスピードや、瞬時に移動可能な交通手段や携帯電話などの連絡ツールなど、50年前には想像できなかった、とてつもなく便利な世界が広がっています。
健康の分野の最新情報も、元気で長生き出来るように上手に活用していきたいものです。
★心の病気の中で、潜在的な患者数が最も多い「不安症」
「不安症」➡必要以上に不安や恐怖感が高じてしまい、日常生活にも支障をきたす状態。
不安症とはいくつかの病気の総称で、代表的な病気に「パニック症」と「社交不安症」があります。
★”性格のせい”と思い込まずに、適切な治療を受けることが大切
不安症は心の病気の1つで、治療によって症状が改善するものだと理解することが大切です。
不安症を放っておくと、アルコール依存症やうつ病などにつながることもあります。
★仕事上のストレスや過労が発症のきっかけになる
WHOの調査によると、日本人の健康寿命を脅かす病気のうち、うつ病は、脳血管疾患、認知症に次ぐ第3位であることが分かりました。
自殺の原因になることもあり、命に関わる重大な病気です。
働き盛りのうつ病では、仕事上のストレスをきっかけにして発症するケースが多くみられます。
「気分の落ち込み(抑うつ気分)」と「何事にも興味がもてず、楽しいはずのことが楽しめない(興味・喜びの喪失)」のうちどちらか1つでも、多少の波はあっても2週間以上、毎日続くようなら、医療機関を受診することが勧められます。
★休職して治療に専念することが、回復の道になることも
うつ病と診断された場合、症状が落ち着くまでには、最短でも2~3ヶ月間、長ければ1~2年間かかることもあります。
うつ病の患者さんのなかには、自分を責めて、会社を辞めるという決断をする人もいます。
その後の人生に大きな影響を及ぼす可能性があるので、うつ病の症状が現れている状態で大きな決断をしないよう、上司や同僚からもアドバイスすることが大切です。
★復職は焦らず慎重に
症状が改善しても、すぐに職場に復帰すると、再び症状が悪化するおそれがあります。
復職する前に、1日の生活のリズムを取り戻す訓練を行うことが大切です。
★産後は10%の女性がうつ病を発症する
産後2~3週間目ごろから1年くらいの間に発症するうつ病を、産後うつ病(産褥期うつ病)といいます。
決して珍しい病気ではなく、産後の女性のおよそ10.3%にみられるとされています。
①マタニティ・ブルーズ
・発症期間➡産後すぐから、10日くらい
・発症率➡30~50%
・経過と対処➡長くても1週間程度で自然に回復
②産後うつ病
・発症時期➡産後2,3週間以降~1年ぐらい
・発症率➡約10%
・経過と対処➡対処や治療が必要
子供とのスキンシップが不足したり、適切なケアができなくなったりするため、子供の発育にとっても重大な影響を及ぼすのです。
産後うつ病の治療でまず大切なことは、十分な休養です。
★月経前にうつ病のような症状が現れることも
月経前に「イライラする」「気分が落ち込む」「頭痛」「腹痛」といった症状が現れる女性は少なくありません。
米国精神医学会の分類(DSM-5)では、このような月経に伴う症状が毎回現れて、それが日常生活に大きな支障を及ぼす場合を、月経前不快気分障害(PMDD)といううつ病の一種としています。
★高齢者は見逃されやすい
うつ病は、高齢者にも多くみられます。
特に、60~70代の女性に非常に多いことが分かっています。
高齢者にうつ病が起こりやすいということは、一般にはあまり知られていません。
「活気がなくなって引きこもりがちになる」「物事への興味がなくなる」といった症状は、アルツハイマー型認知症によく似ています。
うつ病の場合は、もの忘れをする自分を責めるが、認知症の初期には、何か理由をつけて取り繕おうとします。
うつ病と認知症は、間違われやすいだけではなく、合併していることも少なくありません。
認知症の場合、10~20%がうつ病を合併しているというデータがあります。
高齢者のうつ病を予防したり、症状を軽減したりするには、趣味や家事などの”役割”を持つことが効果的です。
★職場のメンタルヘルス
労働者の心の病気を未然に防ぐために、2015年12月から、法律により労働者50人以上の事業所に対して「ストレスチェック制度」が義務付けられました。
ストレスチェックは、1年以内ごとに1回実施し、職業性ストレス簡易調査票(57項目の質問票)を使って、
「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲からのサポート」などの項目を、4段階で自己評価します。
★注意すべき兆候が見られたら、直ちに受診を促す
バブル崩壊後の1998年に急増して以来、14年間以上にわたって自殺者数は、年間3万人を超えていました。
ここ数年はやや減少傾向にありますが、それでも2万4,000人余りとなっています。
自殺による死亡者は、男性が女性の2倍も多く、40~60歳代に多いという傾向があります。
以上で、第5章 睡眠と心の健康の後半を終わります。
日本健康マスター検定の公式テキスト NHK出版より要点を抜粋して記載しております。