今後は高齢者の筋肉トレーニングの重要性は増えてくると思いますが、それ以上に「栄養補給の方法」は必須の課題になってきます。
いくら効率の良い運動を継続しても、結局のところは身につかなければ逆効果になってしまうからです。
運動の仕方はだいたい同じでも、長期的に考えれば食事の仕方だけは、定期的な個別指導が望ましいと思います。
★ロコトレで足腰を健康に
運動によって筋力をつけ、足腰が丈夫になると転倒や骨折、関節の障害を予防できます。
それが、ロコモ予防につながります。
①片足立ち
片足だけで自分の体重を支えるトレーニングは、バランス能力の改善に効果的です。
②スクワット
太ももの後ろ側の筋肉やお尻の筋肉を鍛える効果がある。
★継続のカギは「やり過ぎず、楽しんで」
運動するときは、やっている最中に痛みがなく、少しキツイ感じる程度を目安にすると良いでしょう。
★痩せが筋肉や骨の老化を促す
肥満と同じくらい痩せも健康寿命のために注意が必要です。
特に、65歳以上になったら、同じくらいに「痩せ」の問題が大きくなります。
高齢になると少しづつ食べる量が減ってくる人が多いのですが、食事で十分な栄養が摂れずに痩せてくると、骨や筋肉を維持できなくなります。
★メタボも痩せすぎもロコモを招く
痩せている人は食事量が少なく、栄養が不足して骨や筋肉なども弱くなってしまいがちです。
その影響で、ふらつきや転倒による骨折などのケガがきっかけとなり、サルコペニアやロコモ、寝たきり状態に進んでしまうのです。
★低栄養を防ぐには粗食をやめる
高齢者は粗食や低栄養を改めなければならないのですが、一方で高齢になるほど痩せや低栄養の人の割合が多いというデータもあります。
まずは、粗食が良いという思い込みを改め、野菜だけではなく、良質なタンパク質を摂取するために肉と魚を1対1の割合で食べ、乳製品や卵も積極的にとるなど食事内容を見直しましょう。
★痛みが3ヶ月以上続くと慢性腰痛
腰痛は発症してから1ヶ月以内に改善することが多いですが、3ヶ月以上痛みが持続するものを「慢性腰痛」といいます。
慢性腰痛の場合には、椎間板の障害や神経の圧迫が原因のものもありますが、ストレスやうつ、不安が深く関わっているものもあるのではないかと考えられています。
★ストレスが痛みを悪化させることがある
人の体は痛みが起こるとその信号が脳に伝わって、脳の中心部からドパミンという神経伝達物質が放出されます。その刺激によって脳内麻薬のμオピオイドという物質が大量に放出されて、痛みの信号が脳に伝わらないようにして働きます。この仕組みを、「下行性疼痛抑制系」といいます。
ところが、脳がストレスに長くさらされると、痛みの信号が脳に届いてもドパミンの放出が抑えられてしまうのです。そのため、μオピオイドによる痛みの抑制効果が機能しなくなり、痛みを悪化させたり、長引かせてしまうと考えられています。
★運動は痛みを軽くする効果がある
慢性腰痛の緩和には、運動療法が有効なことが証明されています。
ポイントは、自分が楽しいと感じながら運動すること。
脳がうれしい、楽しいと感じると、大量のドパミンが放出されるからです。
したがって、運動療法で行う運動は、自分が好きなことを選びましょう。
★痛み止めの薬と認知行動療法で防ぐ
薬物療法では、非ステロイド性消炎鎮痛薬や解熱鎮痛薬のアセトアミノフェンを痛み止めとして用いますが、慢性腰痛の場合には、ストレスによる緊張や不安が強いとこれだけではあまり効果が得られないことも少なくありません。
この場合には、抗不安薬や抗うつ薬を併用することが考えられます。
さらに、認知行動療法で考え方や行動を変えることも痛みの軽減につながります。
前向きに考える習慣をつけて、自分が楽しいと感じることをするとストレスが解消されます。
その結果、下行性疼痛抑制系が活発に機能するようになり、痛みを感じにくくなります。
以上で、第7章「高齢の家族の健康、ロコモ」の中盤を終了します。
日本健康マスター検定の公式テキスト NHK出版より要点を抜粋して記載しております。