睡眠については、健康とは密接な関わりがあって、赤ちゃんを見ていれば分かる通り「寝る子は育つ」です。
寝ている間に、細胞は成長や修復を行っています。
良い睡眠を取るためには、「睡眠」のことを理解する必要があります。
★年齢によって睡眠の質や抱える悩みは変化する
睡眠に関する思い込みや誤解が、睡眠の悩みの原因になっていることもあります。
よくあるのが、「健康には8時間睡眠が理想」という誤解です。
脳が必要とする睡眠の量は、高齢になるほど減少する傾向にあります。
25歳の平均が約7時間であるのに対して、45歳は約6.5時間、65歳は約6時間が平均です。
およそ6~8時間程度が標準的な睡眠時間の目安といえますが、睡眠時間の長さだけにこだわり過ぎないことが大切です。
★睡眠不足で生活習慣病に!?
睡眠が不足すると、身体に様々な変調が現れます。
睡眠不足は、心の健康にも大きな影響を与えます。
65歳以上で寝つきの悪い人は、3年後にうつ症状(抑うつ気分)をもつ確率が非常に高くなるという報告があります。
さらに、アルツハイマー型認知症の患者さんの脳内で大量に見られる老廃物(アミロイドβたんぱく)は、睡眠の量が不足したり、睡眠の質が低下したりすると、その蓄積が促進されるとの報告もあります。
この老廃物は、睡眠によって排出が進むことも分かっています。
★命に関わることもある怖いいびき
睡眠を妨げる病気として代表的なのが、睡眠時無呼吸症候群です。
大きないびきとともに、睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。
日本での潜在的な患者数は約200万人以上と推定されていますが、実際に治療している人は、その1割程度です。
無呼吸の間は、体が低酸素状態になるので、そのたびに脳が防衛的に目覚めて、呼吸が再開されます。
そのため、熟睡できずに睡眠不足になってしまいます。
睡眠不足が続くと、「日中の耐えられないほどの眠気」や「倦怠感」や「起床時の頭痛」や「うつ状態」が現れて、日常の生活に支障が出ることも少なく有りません。
また、重症化したまま放置していると、心筋梗塞や脳梗塞による死亡率が、健康な人の3倍になるというデータもあるのです。
また、肥満のある人は、睡眠時無呼吸症候群が起こりやすいので、特に注意が必要です。
★持病が多い人ほど不眠になりやすい
寝床に入ると、足がムズムズして眠れなくなる「レストレスレッグス(むずむず脚症候群)」や、睡眠中に足がピクピクと動き、目が覚めてしまう「周期性四肢運動障害」なども不眠の原因になります。
医療機関では、隠れている病気の有無を調べ、病気があればその治療を行います。
病気が無い場合には、不眠のタイプを調べ、生活習慣の改善指導や睡眠薬による治療などが行われます。
★睡眠日誌をつけて”睡眠の誤解”を解消する
睡眠日誌を付けて、正確に自分の睡眠状態を把握することが、誤解の解消に有効です。
よく眠れていないと思っている人でも、「途中で何度か目覚めたが、合計の睡眠時間は約7時間ある」といったことに気付くことがあります。
日中の眠気がなく、活発に活動できる状態の日の睡眠時間が、自分にとっての十分な睡眠時間です。
★眠気が無いのに寝床にしがみつくのは逆効果
日常生活のちょっとした工夫も、睡眠の悩みの改善に役立ちます。
入浴は、ぬるめのお湯で、就寝したい時間の1時間前くらいに済ませると寝つきが良くなります。
無理に長時間眠る必要はないと分かっていても、眠れないまま布団の中にいるのはつらいものです。
そんな時にはいったん寝床から離れて、眠くなったら寝室に行くようにしましょう。
★起床時間を一定にして体内時計を整える
体内時計は、脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)という部位にあり、1日の体の活動や休息のリズムを調整しています。
体内時計は、本来1日25時間のリズムなので、放っておくと毎日1時間づつずれていきます。
このズレを修正しているのが、太陽の光です。
朝、太陽の光を浴びることで体内時計がリセットされ、そこから約15時間後に眠気が起こる仕組みになっています。
以上で、第5章 睡眠と心の健康 中盤を終了します。
日本健康マスター検定の公式テキスト NHK出版より要点を抜粋して記載しております。